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自己啓発セミナーで死者、法廷で明かされるASK社の実態(上)

2011年6月22日水曜日

自己啓発セミナーで死者、法廷で明かされるASK社の実態(上)

2010年1月、東京都府中市で自己啓発セミナー会社「ASKグローバルコミュニケーション」(現ASKアカデミー、東京都豊島区、代表=松田友一氏)が開催したセミナーで、マルチ商法会社「ニューウェイズジャパン」(NWJ)(神奈川県横浜市神奈川区、当時の代表=戸田廣美氏)のディストリビューター(販売員)だった男性(当時26歳)が死亡。男性の両親が両社と関係者ら損害賠償を求めた民事訴訟が、大阪地方裁判所で行われています。まずはこの事件の背景にある、マルチ商法と自己啓発セミナーの関係をリポートします。


■受講生死亡でも、セミナーを継続

大阪地方裁判所
この事件は2010年1月、東京府中市の「ホテルコンチネンタル府中」地下で開催されたASKのセミナー「アドバンス」コース(料金18万円、4日間)の3日目に、「プリマドンナ」「ベリーダンサー」などに扮して踊る「ストレッチ」と呼ばれる実習の最中に受講生の男性が動けなくなり、亡くなったものです。同年4月、男性の両親はASK、NWJ、両社の当時の役員、NWJのディストリビューター・グループ「ワンダーランド」の代表者(嶋村吉洋氏)に対し、計約1億2000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。

 訴状によると、このセミナーを受講していた約30人の受講生の全員が、NWJのディストリビューター・グループ「ワンダーランド」のメンバーだったとのことです。死亡した男性は、「アドバンス」コースの3日目の朝、一番最初にほか2人の受講生と一緒に「プリマドンナ」に扮して踊り、少なくとも30分踊った後で午前10時頃に倒れ、11時27分にホテルのフロントが消防署に通報して救急車を呼んだものの、同日午後12時半に病院で死亡が確認されたとのことです。

 ASKでは男性が倒れた後も、そのままセミナーを続け、男性の死亡が明らかになった翌日の4日目のセミナーも最後まで行ったといいます。

■ニューウェイズ販売員が集まった自己啓発セミナー

 両親は訴訟の中で、男性は肥満で脂肪肝傾向にあったがそれ以外は全て正常で、特に心疾患などはなく、「急激で激しい運動を強いられたために死亡した」と主張。「プリマドンナ」の踊りについて「全員へのこれからの演技に対する覚悟・恐怖・真剣さなどを植え付け、見せしめとするために徹底的にしご」くものだったとしています。

 訴状によると、男性が死亡した「アドバンス」コースを受講していた受講生約30人は、全員が「ワンダーランド」のメンバーだったとのことです。また「ワンダーランド」代表者の嶋村氏もこの「アドバンス」に立ちあっており、男性の両親はASKや嶋村氏、ワンダーランドなどが一体となって開催しているものだとしています。

 ワンダーランドはNWJのディストリビューター・グループですから、事実上、マルチ商法のディストリビューター教育に自己啓発セミナーが活用された現場で起こった悲劇と言えます。

■連綿と続く、マルチ商法と自己啓発セミナーの蜜月

 自己啓発セミナーは1970年前後のアメリカで生まれましたが、その発祥の経緯もその後の歴史も、マルチ商法(マルチ・レベル・マーケティング=MLM、ネットワークビジネス)と深い関係があります。もともと化粧品マルチの「ホリティマジック」がディストリビューター研修のために民間の心理療法を取り入れたのが、自己啓発セミナーの始まり。後に日本初のセミナー会社「ARCインターナショナル」(2000年に解散)を作ったロバート・ホワイト氏も、元はホリティマジック社の研修を請け負っていた人物でした。

ASK社ウェブサイトより
そして今回の訴訟で被告となっているASKの代表者・松田友一氏は、ARCの元トレーナー(講師)で、その後アチーブメントというセミナー会社でトレーナーをしていました。このアチーブメント社も、現在はわかりませんが少なくともかつてはマルチ商法やキャッチセールスとのかかわりが指摘されている会社です。松田氏は、アチーブメントを離れた後にASKを設立し、そこでニューウェイズのディストリビューター・グループと深く関わっていたというわけです。

■ASKは微妙に名称変更して活動中

 なお、ASKグローバルコミュニケーションは男性の死亡後、「アドバンス」の名称を「SEEKブレイクスルーコース」と改称。会社名も「ASKアカデミー」に改め、現在もセミナーを開催しています。

 またASKは前述のロバート・ホワイト氏を日本に招き講演会を開催するなど協力関係にありました。しかしセミナーで死者が出た後は、同社のサイトでホワイト氏の名前をあまり見なくなりました。【つづく

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